お薦めの1冊~加賀乙彦著「悪魔のささやき」
だいぶ前から、加賀乙彦の著作には親しんできました。最近あまり読まなかったのです。が、新書ですが、さりげなく購入したこの本はすごい! お薦めの1冊です。
加賀乙彦著「悪魔のささやき」です。
「小学生殺人・放火・村上ファンド・・・人は、なぜ思わぬ悪事に手を染めてしまうのか !?」
加賀乙彦(本名 小木貞孝)は、作家にして精神科医です。
子どもへの殺人や自殺にとどまることなく、大量殺人についても言及しています。
あの大文学者にして小説家 野間宏についても「先生」と敬称しながら、明らかな非難をしています。私も、野間宏の大ファンなのですが・・・。大江健三郎も、埴谷雄高、高橋和巳も言わなかったことを、どうどうと公言しています。「さすが、加賀乙彦だ!」と、再評価してしまうほどです。
著者によると・・・、
スターリンが、2000万人から5000万人を粛清した。
第二次世界大戦での死傷者数、ソ連が約1200万人、ドイツが約950万人、日本が約350万人。ナチスドイツの犠牲者は、ユダヤ人と政治犯が約600万人。カンボジアのポルポトに殺された国民が、約300万人。毛沢東の政策失敗による餓死者が2000万人から2500万人、文化大革命での犠牲者が数百万人から2000万人と言われている旨も、強調しています。
それを、日本のいわゆる文化人は、スターリンであれ、毛沢東であれ、「讃美していたことをどう考えているのか?」です。
こう考えると、ヨーロッパ列強による、いわゆる「新大陸発見」以降の侵略・植民地化では、何千万人の人類が殺傷されていったことか !?
「人類は、自然死・病死した人より、殺された人のほうが多いのかもしれない」という、錯覚に陥ってしまいます。
加賀乙彦が、この著作で言いたかったことは、「いかにして現代人は、『悪魔のささやき』から避けられるのか?」なのです。
氏は、「個」を育てること、自分を主体的に考え「私」から出発する、人格を育て確固とした人生への態度を持つ、真の個人主義へ・・・と、読者を結論へ導いてくれます。
賛否はどうあれ、必読の1冊です。
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